第二章
キスマーク、こんなにたくさん・・・・。
シャワーの熱い飛沫を背中に受けながら、綾は昨夜の情交を思い出していた。
鳩羽は綾の体のあらゆる所を、貪るように口づけた。
まるでそのしるし一つ一つが、「おまえはおれのものだ」とでも言うように、紅く染まっている。
いつの間にか指先が乳首に触れていた。
軽く揉んだだけですぐに固くしこってくる。
一晩中、我を忘れて抱かれた体が次第に熱を帯びてきた。
思わず吐息がもれる。
「あっ、あぁん・・・・」
指を止めることはできなかった。
片方の手はそのまま、尖った乳首を。
もう片方の手は潤みかけた花唇へ向かった。
綾がマスターベーションをするようになったのは、鳩羽に体を開かれてしばらく経ってからのことだった。
鳩羽の激しい求愛の果てに、彼への気持ちが徐々に高まり、レイプ同然に奪われた記憶が薄れたことで、セックスそのものが快感に変わった。
互いに思いを受け止めてからは、放課後の茶室はもとより、学院内の様々な場所で、人知れず熱いキスや抱擁を交わした。
そして、そんな日の夜は、昼間の余韻が体を火照らせ、自分を慰めてしまうのだった。
「はっ、はぁ・・・・あぁん」
敏感な芽を捉えた綾が甘い声をもらしはじめた。
「・・・・そんな色っぽい声出すなよ」
びくっとして綾が振り返ると、浴室のドアの側に鳩羽が立っている。
見られた・・・・!?
「いやっ」
恥ずかしさに混乱した綾は、床に座り込んで背を向けた。
「おまえの声、前よりどんどん色っぽくなって、それだけでいっちまいそうになるんだよ」
鳩羽は近寄ってきて綾を立たせ、降り注ぐシャワーを受けながら抱きしめた。
「おまえももうイキそうだったのか?」
言いながら、鳩羽の指は耳から首筋、そして胸へとすべってくる。
「そんな・・・・こと、言えな・・・・」
綾の体を知り尽くした指が体を這いまわり、徐々に力が抜けていく。
「ここがこんなに濡れてるのは、シャワーのせいだけじゃなさそうだな」
微笑を浮かべながら、言葉で綾を軽くいじめる。
「もう、言わないで」
懇願しながら鳩羽の腕から逃れようとするが、彼がそれを許すはずもなく、羞恥にふるえる唇を素早く捉えられた。
絡み合う舌先が一層互いの官能を刺激する。
唇を離した後、鳩羽が屹立したものを指差し、唐突に言った。
「ここにもキスして」
綾は突然の淫らな要求に、とまどいを隠せない。
「・・・・そんな・・・・」
俯いてかぶりを振る綾の肩を抱き寄せる。
「こわくないから・・・・。俺のこと、もっと気持ちよくさせてくれよ」
そうささやく鳩羽の顔をまともに見ることもできない綾だったが、おそるおそる男の股間に目をやった。
いつも学院内で抱かれるときは、秘やかな状況であるため、性急に荒々しく自分の中に入ってくるその強張りが、充血して綾の唇を求めている。
自慰の瞬間を見られて弄られて、体の芯に残った官能が羞恥心を覆い隠した。
シャワーは流れつづけていた。
紅をさしたように紅い綾の唇が鳩羽の分身に触れる。
鳩羽は強く胸を突かれた。
この気高く美しい女の矜持をまたひとつ自分のものとしたような充足感が湧き上がった。
「綾、舐めて」
綾も興奮していた。けれどもどうしていいのかわからなかった。
「・・・・だめ、できないわ・・・・」
口をつけるだけで精一杯の綾だったが、鳩羽の要求はエスカレートしていった。
「この辺りを舌先で弄ってくれればいいんだよ」
そして、有無を言わせぬ力で綾の頭を抱え込んだ。
・・・・そうすれば、鳩羽くんは悦ぶの・・・・?
ためらいながら、上品で小さな口から舌を出し、脈打つものをそっと舐めあげる。
「いいよ、綾。もっと・・・・」
それだけ声に出し、快感の嗚咽を漏らす鳩羽を見て、綾は知らず知らずのうちに大胆になっていた。
鳩羽の方も、覚束ない仕草で一生懸命自分の分身を愛撫する綾の姿を見ていたら、もう抑制は利かなかった。
綾の頭を起こし、その潤んだ瞳を見た次の瞬間に、床に押し倒した。
そして我慢しきれずに激しく突き上げる。
「ああーっ・・・・」
綾は息もできないほどの快感に、すぐ達してしまった。
それでも鳩羽は飽くことなく、体を打ちつけてくる。
綾の中に再び炎が蘇り、悦びの吐息が洩れていく。
「あっ・・・・ん、あぁん・・・・」
果てることのない悦楽に、綾は何度も気を失いそうになる。
----シャワーは流れ続けていた・・・・。
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