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 淫らな、夢だった。

 あられもない姿で鳩羽の前に跪き、その部分に顔を埋める。
 一心不乱に昂ぶりを舐め上げ、小さな紅い唇がその剛直を頬張り、何度も往復しながら啜り上げた。

 時々嗚咽を漏らす鳩羽が、綾の黒髪を掻き抱く。
 もう限界は近かった。
 
 綾は....陶酔していた。
 鳩羽を感じさせている自分。
 放恣に鳩羽自身を貪り、自らも夥しく濡れる....。

 勢いよく喉奥を襲う白濁液を、綾は進んで飲み干した。
 現実の世界ではどんなものかもわからないというのに。

 互いの荒い呼吸が重なり合いながら、鳩羽に抱きすくめられ、綾は腕の中におちていった。
 終わりの見えない快感に溺れそうになりながら......。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 目覚めると、全身が濡れていた。

 「おはよう、綾。大丈夫?」

 同室の女生徒が声をかけてくる。
 まだ激しい動悸が鎮まらない綾の様子を心配しているようだった。

 「どうしたの? うなされてるみたいだったけど。何だか顔もぼうっと赤くなってるよ」

 「......あ....りがとう。何でもないの」
 やっとのことでそれだけ言って、綾はパジャマの合わせ目をぎゅっと握り締めた。

 まだ体が覚えている、その感触....。
 自ら進んで鳩羽を求めて、そして........。

 「私、クラブの練習があるから先行くけど、体調悪いようだったら無理しないでね」
 「うん、ありがとう.....」
 綾は力なく微笑んだ。

 ----大きな衝撃だった。

 いつも情交のはじまりは鳩羽からだった。
 春休みの旅行で二人の絆が深まったのは実感していたものの、肉体的なことに関しては、はるかに鳩羽からの求愛が多い。
 今日の放課後に約束している茶室での待ち合わせ.....そこでも鳩羽は綾を欲しがるに違いない。
 それは最早二人にとって自然なことだった。

 だが今日の夢は......。

 綾は自分を嫌悪した。
 淫らがましい自分。
 羞恥心のかけらもなく、全てを曝け出して艶めいた声をあげ.....。

 鳩羽に会うのが怖かった。
 どんな顔をすればいいのか....。
 朝食の時間を知らせるチャイムの音が、頭の中を通り過ぎていった。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 あのいやらしい夢を忘れようと、綾は努めて別のことに没頭しようとした。
 けれど無理だった。
 身支度を整え、何とか平常心を保って授業を受けた。
 しかし、休み時間にトイレに入ったとき、綾は気づいてしまった。
 下着を全て取り替えたはずなのに、ショーツには綾の中心から溢れでた透明な痕跡が残っていたのだった。

 動揺を隠し切れずに4時限目の体育の授業に臨んだ綾の様子を、鳩羽は訝しげに眺めていた。
 朝からどうも元気がない様子で、表情が暗い....。
 
 男女とも広い学院内を一周するマラソンの授業だった。
 昼食前にこんなことやってられない....などの文句の声も聞こえる中、案の定綾はがくりと膝をついてその場にしゃがみこんだ。

 「おい、大丈夫か!?」
 素早く鳩羽が駆け寄る。
 そんな様子をクラスメイトたちは、半分好奇の視線で見つめていた。
 「姫」と呼ばれる綾と奨学生である鳩羽が付き合っているのは暗黙の了解となりつつあるが、やはりそれを目の当たりにすると、勘繰りの気持ちを抑えられないらしい。
 特に男子生徒は、お堅い高嶺の花として崇められていた綾を鳩羽に奪られたということで、やっかみの目を向ける者も少なくなかった。

 「先生、俺こいつ保健室連れてくから」 
 「あ、ああ。よろしく頼む」
 圧倒されたように体育教師が頷く。

 「鳩羽くん....大丈夫だから....」
 「黙ってろ。今日はおまえ、ちょっとおかしいから」

 有無を言わさず綾を抱き上げて、校舎に向かう鳩羽の姿に、女子生徒たちの囁き声が響いた。
 「なんか....鳩羽くん、かっこよくなってない?」
 「綾、あんな風に大事にされてて、ちょっと羨ましいね....」

 一方、綾は鳩羽の腕の中で胸が苦しくなっていくのを感じていた。

 「着いたぞ」
 ノックをして引き戸を開けても、保健医の姿がない。
 机には「13:00まで離席中」とのカードが置いてあった。

 誰もいないベッドの上に綾を下ろす。

 「熱とかは? どっか具合悪いのか?」
 鳩羽の大きな手のひらが綾の額を包む。
 目を伏せる綾に、

 「何だ、全然熱くねーじゃん。ここだけは火照ってるみたいなのに」
 そう言って鳩羽は綾の頬から耳たぶに触れた。

 「だから....大丈夫だってば..........」
 ますます頬を染めて自分の目を見ようとしない綾に、鳩羽は口づけをした。

 「い....や....」
 「どこも悪いところがないんだったら、茶室でもここでも同じことだろ」

 鳩羽の舌が、綾の耳朶を這いまわり、急速に力が抜けていく。
 理性と官能の狭間を必死に行き交いながら、鳩羽の腕を拒もうとしても、それは徒労に終わった。

 「........! もうこんなに濡らしてるじゃないか」
 「..............」
 綾の体の中を羞恥の炎が駆け抜けた。
 ......気づかれたくなかった。
 自分の中にとうに、はしたない潤みがうまれていることを。

 「欲しかったんなら....素直にそう言えよ」
 鳩羽は、豊かに張りつめた綾の乳房を揉みしだき、先端を強く吸い上げた。
 
 「......っ、あぁ........」

 「乳首も、ここも、痛そうなくらい充血してるぜ」
 鳩羽の、羞恥を煽る言葉に一層官能を刺激され、敏感な突起を愛撫されながら、綾の頬に涙が伝った。
 感じ過ぎる自分がみじめで、でも止められなくて、どうしていいのかわからない。
 
 「綾、どうした....?」
 鳩羽が綾の涙を舌先ですくい上げる。
 けれども涙は、後から後からこぼれていく。

 涙の理由を知ってか知らずか、鳩羽は綾の迷いを吹き消すかのように言い放った。

 「....何も考えるな、すぐにイカせてやる」
 「..........!」
 綾の中にふるえが走る。

 次の瞬間、鳩羽は剛直を綾の中に激しく沈めていった。
 全身を叩きつけるように.....そして綾の身体の全てを愛おしむようにまさぐっていく。

 ........快美感がせり上がってくる。
 次第に意識がその部分に集中していくのがわかった。
 鳩羽によって、自分の身体が......そして心がこんなにも変わってしまったことを、綾は思い知らされるのだった。

 ----自身の甘い声を遠くに聞きながら、綾は墜落していきそうな錯覚に捉われた。
 それがどこなのかはわからないけれど.........。




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