4


 ........艶やかな紫色の着物が、まるで大輪の花のように広がっていた........。

 その上に仰向けになって、綾は白い裸身を晒していた。

 目は閉じられている。
 しみひとつない滑らかな肌が紅潮し、つんと上を向いた乳首から乳房までがふるふると揺れている。
 抑えようとして....抑えきれない声が漏れ出る。

 片方の手は傍らの襦袢を握り締め、もう片方の手は秘めやかな茂みに伸びていた。
 指先がもっとも敏感なところをなぞりあげるたびに、綾の甘い呻きが次第に大きくなっていく。

 自分の中の深遠を探り当てるように、綾の指は奥深くを何度も行き来しはじめた。
 切なげに眉根を寄せ、甘く荒い呼吸を繰り返しながら、長い黒髪を振り乱す。
 綾は体を横に曲げて、こぼれ落ちそうな乳房を揉みし抱いた。
 潤みきった秘淵が指を欲しがる。
 挿入された部分から淫らがましい音が響き渡った。

 鳩羽はその場から先に進むことができなかった。
 圧倒されていた。
 綾のこんな官能的な姿を見るのは、はじめてのことだった。

 「ああ.....ああ.....ん....鳩羽く.....ん....もう......」
 自分の名前を呼ばれて、瞬間鳩羽は我に返った。
 どう見てもいつもの綾ではない。
 それとも自分が、綾を知らなかっただけなのか......。

 考える間もなく、綾のそばに転がっている湯呑み茶碗に気がついた。
 いつも綾が大切に手入れしているものだった。
 畳の上に放りっぱなしにしておくことなどありえない。
 「................」

 普段の綾との違いを客観的に考えようとする自分と、今すぐにでも綾を抱きしめて貫いてしまいたい衝動に駆られている自分がいた。
 鳩羽が躊躇しているうちに、いつしか綾は自分自身で絶頂を迎えていた。
 ......横たわり背を向けている綾は、まるで意識を失ってしまったかのように静かだった。
 ただ時々、微かに揺れる肩先が綾の鼓動を伝えている。

 もうどうにも我慢できずに、鳩羽は綾の方に向かっていった。
 「綾........」

 ビクッとして綾が体を起こす。
 振り向きざまに鳩羽は綾の体を抱きしめた。

 「....いやっ、どうして......!」
 あまりの羞恥に、狼狽し逃れようとする綾の腕を掴み、鳩羽は綾の唇を自分の唇で塞いだ。
 舌を深く差し入れられ、綾の体の力が抜けていく。

 「こんなの見せられて......俺だっておかしくなるだろ」
 服を脱ぐのももどかしく、鳩羽は綾を組み敷いて一気に突き上げた。

 「は............く........」
 「あぁーっっ........」
 鳩羽は叩きつけるような激しい抽送を繰り返し、二人はすぐに昇りつめた。
 綾の弓なりになった身体がふるえている。

 しばらく動けずにいた綾は、やがて上体を起こし、鳩羽の胸に頬を寄せた。
 「.......恥ずかしい.......でも止まらないの......。もうどうしたらいいのか、わからない......」
 そう言って綾は自分から唇を押し当て、鳩羽の乳首にキスをした。
 綾の舌が乳首から首筋、うなじから耳たぶへと這い回っていく。

 「....どうしたんだよ......何があった....?」
 綾を抱く腕はそのままに、鳩羽は混乱した頭で尋ねた。
 だが綾の瞳は蕩け、いつもの凛とした光はそこになかった。

 「本当は、私、こんなにいやらしいの。あなたのことが欲しくてたまらないの。軽蔑しないで」
 「............綾」

 綾は鳩羽の前に跪き、先ほど強く自分の中に入ってきたものに手を添えた。
 自分自身の愛液にまみれたそれを、迷いも無く綾は口に含んだ。
 「う.......」
 鳩羽は突然の綾の変貌に戸惑いながら、身体の中心を走る快感に思わず声を上げた。
 一体何が綾をそうさせたのか......。綾に何が起こったのか......。


 喉に熱い塊を受け止めながら、綾はぼんやりした意識の中、思い返していた。
 乱れた....放恣な姿で鳩羽を貪る自分。
 鳩羽を感じさせて....それが嬉しくて....自らも快楽の底に沈んでゆく......。
 ----それは、あのときの夢と同じだった。

 鳩羽は、自分の分身を啜り上げ愛撫する綾の頭を掌で抱え、髪の間に何度も指を絡ませながら、迫り来る予兆を押しとどめようとした。
 「もう....お前のなかにぶち込みたい......」

 頬にかかった綾の後れ毛をかき上げ、鳩羽は再び綾を組み伏せた。
 「強く.....抑えつけて......溶けそうになる」
 「綾......」

 綾の両手首を掴みながら、鳩羽はゆっくりと奥深くまで抽送し始めた。
 「気持ち....いいの?」
 「....ああ、何かお前の膣(なか)が、すげぇまとわりついてくる」
 
 思わず鳩羽の手に力がこもる。
 綾に痛みを与えたのではないかと、気遣う気配を察した綾は言った。
 「いい......いいの......もっとひどくして」
 「..............」
 「本当は........ずっと....自分からあなたのことを......求めたかったの......」
 「..........」

 綾の言葉が鳩羽のなかに沁みていった。
 たとえ今の綾が正気ではなかったとしても、綾の心の奥底から溢れ出た言葉には違いない。
 鳩羽は、綾にキスをし、何度も舌を吸い上げ、絡め合わせた。
 そして、綾の弱いところを幾度となく責めたてる。

 「あっ......あぁ......ああん.....」
 ........体の隅々まで鳩羽で埋め尽くされたような気がした........。
 自分の上に覆い被さった長身の身体に綾は腕を回した。
 掴まっていないと、鳩羽のなかに溺れてしまいそうな気がしたのだ。

 再び、限界が近付いてきた。
 互いに体を叩きつけるかのように、本能のままに相手を求め、貪り合う......。

 ほんの一瞬、綾は視界の外にあでやかに微笑む母の姿を見たような気がした。
 だがそれは、鳩羽とともに味わう絶頂の中ですぐに消え去っていった........。






 ←前の章へ  次の章へ→
 
 






MENU  HOME

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送